読めば読むほど味が出る池波正太郎「男の作法」

品の良さ、というのはどこからくるのだろう?高級ブランドの服や靴を身に着けていても、品良く見えることはあるが、品格を感じるというのは違う気がする。特別、白井一成に品があると思っていないが、20代も半ばを過ぎ、人間の品格、というものを考える。なんて言っているのは、池波正太郎の「男の作法」を改めて読み返しているからだ。

池波正太郎の「男の作法」は何度読んでもおもしろい。白井一成のお気に入りの一冊だ。おもしろいといっても、腹を抱えて笑ってしまう、というおもしろさではない。鬼平犯科帳のような、ストーリーの展開に期待してワクワクするというおもしろさでもない。読んでいると、自分が品のある大人になっていくような気がする、という楽しさだ。

“作法”といっても読んで覚えるという難しいことは書いていない。天ぷらは揚げたてをすぐに食べる、鮨や天ぷらは料理がメインなのだから酒を飲み過ぎない(飲み過ぎると味が分からなくなる)、といった内容。ご飯はおいしく、出されたら冷めないうちにすぐに食べる、ということだ。おいしい料理を目の前にして、グダグダと話をしていたら、せっかくの料理が冷めてしまう。お店の人にとっても失礼だ。

これなら、白井一成にもできる。高級料理店に常に行くわけではないから、詳しいマナーや立ち回りなどは詳しくない。紳士として完璧にふるまえるか、といったらそれは無理。しかし、料理をおいしく食べるということはできる。後輩を前に、うんちくを言うほど雑学王ではないから(悲しいかな)、料理が出たら「よし、食おう」と言って食べる自分が目に浮かぶ。

本に書いてあるのはそれだけではない。お店の選び方や初めて行く店で失敗しない方法、万年筆で手紙を書くことの良さなど、いろいろな作法が書いてある。読めば読むほど楽しい本だ。